甘い気持ち丸かじり

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 なんで女ってやつは、そんな甘いもん食べたがるんやろ。

 苺やら、アイスやら、生クリームやらが次々と口に運ばれていく様子を眺めながら、平次はそんなことをぼんやりと考えていた。
 和葉が観たいと言っていた映画に付き合って、昼メシは自分が知っているウマい店に彼女を連れて行って、少しぶらぶらしてから(男にとっては興味のない、ウィンドーショッピングとやらの何がそんなに楽しいのか理解不能である)どっかで茶でも飲むか、ということで入ったファミレスで。
 和葉は苺と生クリームが山のように盛られた『ベリーベリーパフェ』なるものを注文したのだ。
 そんな甘ったるいものを嬉々として食べているのを見ているだけで、自分の啜っているブラックコーヒーすら甘くなってしまったように感じる。
 さっき、お腹いっぱいで死にそうや〜なんて言っていたクセに。どういうことやねん。
 食後のデザートは別腹や、なんて常套句は聞き飽きた。
 この前なんか、東京で大人気のお店が大阪にもできたから、と一緒に行ったものの。これでもか、とクリームとチョコレートソースとフルーツが乗っかったパンケーキの専門店だったりして、げんなりしたこともあった。
 当の和葉はこちらの呆れ顔に気付かないのか、「平次も食べる?」と、やたらと細長いスプーンの先に溶けかけたアイスを掬って突き出してきたりする。

「アホ、いらんわ。ンな甘いモン」
「何や。じっと見とるから、欲しいんかと思った」
「見てへんわ、ボケ!そんなん、よう食べるなぁって逆に感心しとっただけや」
「ふ〜ん、そう」
 和葉は、あっさりとスプーンを翻して、そのままパクッと自分の口に放り込んだ。
 突っ撥ねたものの、一瞬。ほんの少しだけ、惜しいような気がするのは何故なんだろう。

 いや、甘いもんはいらないんや、甘いもんは。

「どんくさいやっちゃな、…ついとるで」
 ふと気付いて、口の端を指で指すと。
「えっ、いややホンマ!?」
とか何とか言いながら。
 ぺロリ、と赤い舌の先が僅かに覗いて、クリームを舐め取った。


「・・・・・」
 ずずずっと中身のなくなった氷だけのグラスが音を立てる。
「何やの、平次」
「は?」
「さっきからジロジロ見てるやないの。見てないとか言うといて。やっぱり、ホンマは欲しいんとちゃうの?」
「…あっ、アホか!いらんっちゅーとるやろ、ボケッ!!」
「アホとボケ以外に言うことあらへんの…?」

 過剰に反応してしまう自分自身に動揺して。
 とにかく、甘いもんは…いらんことはないけど。なんて、今はまだ。
 彼女にだけは知られたくはない。


 END



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あとがき。

本当は「CHU−LIP」より先にこっちができてて、派生的に出てきたネタが間接チューのやつでした。
結局平次もこんな感じだよっていうね。こんな話ばっかだね…また歌詞からは逸脱しました。
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